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東京都杉並区
全国の自治体で初めて策定 防犯カメラ設置条例の意義

東京都杉並区では全国で初めて、防犯カメラの設置・運用の基準を定めた「防犯カメラ設置・利用条例」が成立した。この7月から施行されるこの条例では、公共の場所に防犯カメラ設置する場合区に届け出ることを義務づけ、画像の外部提供も禁じている。

犯罪抑止の切り札として注目される一方で撮影される側のプライバシーを侵害する危険もはらむ防犯カメラ。杉並区の条例は議論の沸騰するこの問題にどんな一石を投じるのだろうか。

山田宏区長に聞いた。



出典/月刊「e・Gov(イー・ガバ)」2004年7月号
佐々木俊尚=文・取材
安本彰=写真

カメラの効果を認めつつも何らかの基準が必要

ー条例を制定するきっかけは何だったのでしょうか。

山田 平成14年度末に警視庁がスーパー防犯灯(緊急通報ボタンと防犯カメラが一体となった機器)を杉並区の浜田山地区に設置したのがきっかけです。撮影された映像がどのように処理されているのかなど、なんらかの基準が必要なのではないかと考えました。


ー防犯カメラの設置は、治安の切り札としても注目されています。

山田 10年以上前の話ですが、英国の防犯カメラの状況を見たことがあります。ロンドン市内などで治安が悪化してカメラが数多く設置されたのですが、自殺者の映像が流出して繰り返しテレビのニュース番組で放映されたり、あるいは万引き防止のために試着室にカメラが設置されたのが批判されるなど、さまざまな問題が噴出していました。防犯のためなら何をしてもいいということではないと思います。


ープラバシーの問題をどのように考えていらっしゃいますか。

山田 問題は自分の写っている映像が許可なく持ち出され、いろいろなところで再利用されてしまうことです。みずからのプライバシーをコントロールする権利は、人間の精神的自由につながるとわたしは考えています。しかもカメラで撮影された映像はデジタル処理され、インターネット社会の中で映像と個人情報が容易に結び付けられるような事態になってきています。こうしたことが進みすぎると、たいへん窮屈な世の中になってしまうのではないでしょうか。


ー条例では、撮影された本人から画像開示を求められた場合に防犯カメラ設置者は「開示するよう配慮しなければならない」と定められているのですが、具体的にはどのような手順になるのでしょうか。

山田 開示を求められる方は、まず区役所に来ていただくことになると思います。区で判断し、その理由が妥当だと判断できれば、設置者に対して報告を求めることになります。またプライバシーにかかわることであれば、どう開示するのかは区の個人情報保護審議会にかけて意見をいただくことになるでしょう。


防犯対策は地域、警察と連携しコミュニティの復権で対応


ー治安を守るのはカメラだけではないという指摘もありますね。

山田 防犯カメラはいったんは犯罪率を下げますが、新宿区歌舞伎町やロンドンの設置例を見ても、犯罪率は再び増加傾向にあります。決してカメラで完全な安全が保証されるわけではないのです。杉並区の場合は、カメラよりもむしろ自主的な防犯パトロールに力を注いでいます。パトロールをしたところはちゃんと空き巣や泥棒が減っていて、コミュニティの復権が治安にはいちばん重要であるということがよくわかる結果となっています。


ー今回の条例では、国や都、警察などが設置した防犯カメラは条例対象外となっていますが。

山田 国や都は杉並区の権限の及ぶ範囲ではないからです。仮に条例に定めても、法的効果は期待できません。ただ警視庁に対しては杉並区の条例に合わせた基準を作っていただいて、報告を求めていきたいと思っています。


ー防犯カメラのプライバシー侵害について、どの程度の抑止効果が期待できるのでしょうか。

山田 条例自体に強制力はありませんが、設置者の責任は明示しているので、意識を持たせるという意味ではかなりの抑止効果は期待できると思います。しかし実際にどのような事態が起きるのかは、条例を施行してみないとわかりません。その時々に対応を考えていかなければならないと思っています。


ー防犯カメラ条例案を運用する部署はどこでしょうか。

山田 昨年7月、防災やテロに対応するために危機管理室を新設しました。今年4月、その中に生活安全課という防犯目的のセクションを新たに設置しており、ここで防犯カメラ関連を扱っていくことになります。


ー今後の課題はどのようなことになりますか。

山田 カメラで撮影した映像の保存期間や、提出を求める際の明確な基準を条例化する必要があるのかどうか。あるいは自主的なものに任せていいものか。防犯目的であれば長時間保存する必要はないでしょうし、このあたりの具体的な運用方法をこれから考えていかなければならないと思っています。

e・Gav