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自治体の自主課税 日本の発展は自治体から

(前ページより続き)

鈴木 : なるほど、もう目標を達成しちゃったわけですね。

山田 : ええ、既に二割を達成している。これはバカにでかい数字が出たのじゃないかということで、ほかの区も調べてみた。練馬区と杉並区のコンビニで同じ調査をしてみると、杉並区は拒否率が25%、練馬区は15%。練馬区と杉並の差でも10%の拒否率の差が出ている。

 しかも、区内に本社がある大手スーパーマーケットの月ごとのレジ袋使用状況を各店舗で統計をとっているが、それも杉並が全国平均に比べて極端に拒否率が高いという緒果が出て、うん、これはまともな数字だと。そこで一年間の目標を上方修正して33%、三人に一人の拒否者にというのを定めて、今運動を進めているところです。・ 日本の発展は自治体からまた重要な点は杉並の法定外目的税である杉並環境目的税は、大衆課税だという点です。ほかの自治体のつくった税は、産廃税にしろホテル税にしろ何税にしろ、すべて域外の住民にかける。有権者にかけていないわけです。有権者にかけたとしても一部の人です。レジ袋税の特異性は、全員が払う可能性がある。そういう意味では大変な難産だったわけです。

  だけど、こういう真正面からのまともな税制論議が杉並でできた、またはこういう税が成立したという背景には、当然ながら杉並区民の高い意識がある。そういうものに対して負担をしてでもいい社会をつくろう、コストを負わないといい社会ができないという意識レベルの高さが背景にあると同時に、さっきもお話ししたとおり杉並病という杉並にとってみれば非常に不本意な廃棄物にかかわる健康被害の問題を抱えていたという原点があるわけです。


鈴木 : それで「隗より始めよ」というメッセージが区民に届いたということですね。


山田 : は い。


鈴木 : レジ袋税は難産でしたけれどもうまくいったと思うんですが、次に何かこのような手法で取り組んでいきたいと思われているものはありますか。


山田 : 次は、税というのはなかなか難しいんですけれどもゴミの有料化を研究したい。日野市等が取り組んでいますけれども。


鈴木 : 先ほどの自治基本条例のお話もそうだと思いますが、議論の過程で杉並区役所、これは区民から選ばれた区長さんのもとですから、住民の意思は体現しているわけです。さらにそのうえで区議会にきちっとかけますから、ここも民意は反映されたシステムになっている。加えて第三の、直接の区民の声を政策に反映していく。こういうところにすごくご熱心で、そこにかなりチャレンジしていらっしゃるなという気がしているんですが、その基本的な考えと、あるいは詳細なプログラムについてお話をいただければと思います。


毎日苦情がくる区役所にこそ

山田 : 二一世紀の社会のテーマは「自立」です。自立がすべてキーワードです。

 自立は責任を負うということも含めて自分で決めていくことです。自立は自由にもつながっていきます。この自立ということが一番大事なので、そういう意味でなるべく情報をオープンにして、みんなで考えて結論を出していく。なるべく情報をオープンにして、みんなの意見をなるべく出しやすい雰囲気をつくって、負担も責任も負うけれども、この点で権利も主張する、サービスも受け取るということを日々の行政サービスの中で実感をしてもらうことが、自分の地域を大事にするという気持ちにつながっていく。

 また「自立」「責任」と同時に、これからの時代を切り開く知恵は、多くの人々の心の中にしかないと思っています。現在どこに日本の新たな豊かさや繁栄のモデルがあるかというと、ドイツにもフランスにもアメリカにももうありません。あるのは、悩んでいる人々の心の中、または模索してそこから突き抜けようとする人々のエネルギーから、それを見出すしかないわけです。そしてそれを見出せるのは地方自治体、一番住民に近い市役所や区役所なんです。毎日苦情が出て、毎日要望が来るのですから。その中におかしなのもいっぱいあります、勝手なのもありますよ。だけど、いいものもあるわけです。そういうものを見出して、形にしていく。それが各地方で行われていく。形にすると同時に、負担もお願いしていく。情報も公開していく。新しいものにみんな参加してもらう。そういうことを各地方でモザイクのように繰り返していくことによって、より大きな知恵となり、それが国全体の繁栄や発展にいずれつながっていく。だから新しい日本の発展の種は人々の頭の中にあるのであって、どこかほかの国にあるわけじゃない。


鈴木 : その考え方が3300の地方自治体に広がったときに、まさに新しい日本ができ上がるんでしょうね。


改革の伝播が早い情報の時代

山田 : 確実に広がるのは、「杉並でこんなことをやっている。なんだ、うちの区は」と始まるんです。例えばインターネットで「うちはこんなことをやっていますよ」としょっちゅう保育レベルの交換をやっているわけです。すぐ伝わって、すぐまた市民団体が動いて、そして区議会議員や市議会議員が、それを議会で質問して、今度は市長や区長が答えなければいけないのだから、それは早く伝播しますよ。


鈴木 : その広がるスピードが速いのが情報の時代なんですね。


山田 : そうです。でも国は図体がでかいから動くのに大変です。地方自治体はサッと動きますから、変化は早いですよ。


鈴木 : 杉並は住基もあるし、様々な新しい試みが行われ、おもしろいですね。


山田 : 僕はなにか新しいことをやっているように見えていますが、全部「本来どうあるべきか」という古いテーマですから。


: そうですね。結論が出なかったところを、知恵を使ってプレークスルーしているんですね。知恵を持って進む区長のさらなるご活躍をご祈念申し上げます。



やまだ・ひろし
1958年、東京都杉並区生まれ。44歳。
京大法学部卒業後、松下政経塾に入塾。85年東京都議選に、最年少の27歳で当選、2期。93年衆院選に日本新党から出馬し当選、1期。98年に杉並区長に当選。レジ袋税導入(今年3月に条例が成立)で話題を集めた。

出典 : Discussion Journal 『民主』
Discussion Journal 『民主』 編集委員会の転載許可を頂いて掲載しております。