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「経済産業新聞」2003.7.5 <コラム/知恵の輪> 

第一回 野田一夫 第二回 浜田和幸 第三回 森田松太郎 第四回 高梨智弘
第五回 土屋守章 第六回 八木哲雄 第七回 山田宏

「大波」が地域を変える 山田宏(杉並区長)

 初めて区長に就任した4年前、私は楽熟会という会で講演をする機会を持った。この会は、区の保険センターを基盤に、健康づくりをテーマに活動する区内に数多くある自主グループのひとつで、その中心は退職後の男性たちである。

 ひとしきり区の課題をお話し終わると、代表のKさんが「区長の話はわかった。だが私たちはまだ元気で経験もあるので、困っている区の役に立ちたい。何ができるか?」との質問があった。私はとっさの回答ができずに、「これから『区政への参加メニュー』を作りたいので、それを見て決めていただきたい」と約束した。

 その『区政への参加メニュー』は残念ながらまだできていない。しかしあと4年もすれば、昭和22年生まれの「団塊の世代」といわれる方々が60歳定年を迎える。堺屋太一氏によると、昭和22年から25年生まれの世代の人口は、その前後の世代と比べて2割から3割ほど多いという。今から4年後、その「団塊の世代」の人たちが、「会社人間」から「地域人間」になる。楽熟会のような人々が地域を埋め尽くしていくのである。

 この「大波」に対して、ただ堤防だけを強化するのか、それとも運河をめぐらしその「波」のエネルギーを豊かな地域づくりに生かすのか。おそらく「団塊の世代」の「地域デビュー」の仕組みを作ることに成功するか失敗するかは、その地域が生き生きとするか、沈滞したものになるかを分けることになるだろう。いや、その人たちの膨大なエネルギーを十分に生かすことは、低迷を続ける日本の再生にも直結するだろう。

 杉並区では、あらゆる分野を網羅した『区政への参加メニュー』作りを急いでいる。例えば区のホームページを開くと、「すぎなみ地域参加全メニュー」というコーナーがあって、そこをクリックすると、子育て、介護、教育、ゴミ、公園経営など何百という地域参加メニューが表示され、興味のある分野の地域情報が手軽に手にはいり、いつでも簡単に個人で参加できる仕組みを創らねばならない。

 その後楽熟会は、有志で介護事業を行うNPOを立ち上げ、中学校の空き教室を活用したデイサービス事業を展開され、ニュースになった。しかし4年後は、それがニュースにならない社会でなければならない。



出展:経済産業新聞2003.7.5