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第十六話  「早飯取り」



 高校時代はお腹がすいて時々「早弁」、つまりお昼前の授業中にこっそり弁当を食べちゃうことをしていましたが、今日の話はこの「早弁」のことではありません。「早飯取り」は「ハヤメシとり」と読むのではなくて、「サバとり」と読みます。

 政経塾時代には、鎌倉の円覚寺で3泊4日の座禅研修がありました。朝3時からの暁天座禅から始まって一日何回かの座禅、読経や和尚さんの法話、作務といわれる掃除などが夜9時の就寝までの日課でしたが、何よりつらかったのが食事の時間でした。

 一日3回の食事は、厳格な作法に則って行われます。まず2つのお椀と1つのお皿、そして箸を布で包み、それを持って一列に並んでお膳の前に正座で着席します。全員が着席すると和尚さんに合わせて般若心経などの読経が始まります。30分くらいの読経の後、食事当番が食事をお椀やお皿によそっていきます。すべての作業が音をたてず無言で行われていきます。もちろん内容は一汁一菜、そしてご飯だけ。準備が整うまでに小1時間。もう足は痺れまくっています。そしてやっと「いただきます」です。

 ですから食事中は足のしびれと闘う方に気が集中してしまい、脂汗は流れてくるし食事どころではないのです。しかも終始無言。お替わりは3回までで食事当番が回ってきますが、足のしびれから一刻も早く解放されたいので、ほとんどの人はお替わりを我慢していました。なぜなら全員が食べ終わらないと、この「苦行」から解放されないからです。しかしそんな皆の願いもむなしく、3杯目までお替わりをした塾生がいて、皆睨みつけていました。

 全員が食べ終わると、ご飯のお椀にお茶が注がれます。まずお茶でお椀をきれいに洗い、そのお茶を今度はお皿に移してお皿も洗います。さらにそのお茶を汁のお椀に移して洗います。そしてすべての食器をきれいにした後、そのお茶をいただくのです。すごいでしょ!いっさい無駄がないのです。


 さて、実は「いただきます」の前にこの「サバとり」という儀式があります。それは、食事の前によそわれたご飯から四、五粒の米粒を箸で取り、お膳の右奥の角にそっと置くのです。それからやっと食べられるのです。その後食事当番はちり取りのような物で、この米粒をそれぞれのお膳から集めて回ります。集め終わると、それを庭にまくのです。

 なんで、そんなことをするのかって?!

 それは、鳥たちをはじめ生きとし生けるものと自然界の恵みを分かち合い、感謝するためなんだそうです!!残り物をまくのではなく、食べる前に捧げる。わずか四、五粒のお米に対するこの儀式に、当時の私は大変感銘を受けました。

 つらい座禅研修でしたが、たくさんの心の収穫がありました。