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第九話  「天国からの請求書 その1」



 都議選の告示まであと2週間と迫ったある日、松下幸之助塾長の秘書さんから連絡があり、「塾長が『激励したい』と言っている」ということで、芝の松下電器まで行った。「なんだろう」と恐る恐る相談役室に入ると、松下さんが座っていた。

「君、ようがんばってるな。もう少しや」

とにこやかに一言話した後、一枚の小さな長方形の紙を出して

「これな、ささやかながらワシからの援助や」と。

「はい??」その紙に目を落とすと、小切手だった。額面を見ると、5のあとに0がいくつも並んでいる。

「五百万円ですか?!」と、今まで見たこともない大金の小切手を震える両手で持ったまま、「こんな大金いただいてよろしいのですか」と尋ねた。

そこで松下さんは、私の目をじっと見てこう言った。

「いや、あげるのとは違う。貸しや」

私は一瞬言葉に詰まってしまって、

「えっ?それでは、返さなければいけないのですか?」と聞くと、

「そうや」と松下さん。

(そんな、こんな大金返せるわけないのに。そんな殺生な)と思いながらも、「ありがとうございます」と深々と頭を下げると、松下さんはこう言った。

「毎年3月の10年返済でええわ」

「は、はい」と私。

そして、松下さんはさらに、

「けどな、それじゃ貧乏な君にはかわいそうやから、利子分は寄付したるわ」と。

「え?! 塾長、利子もつくんですか?!」

「そりゃそうや。でもその分は君への寄付や」


 当時27歳の私の甘さには、今思うと恥ずかしい限りだが、それにしても松下さんは、その時点では発生していない利子だけを『寄付』してくれたのだった。 



松下幸之助塾長講義