山田宏のニュースリリース
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6月10日 掲載 八重山日報 『「38度線」が「対馬海峡」に下りてくる』
2018.06.12

6月10日掲載 八重山日報に寄稿いたしました。
ぜひお読みください。
 *八重山日報さんの許可を得て転載いたします。
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【「38度線」が「対馬海峡」に下りてくる】

 4月末から5月初めにかけてハワイを訪問し、当時のハリス太平洋軍司令官、バーガー太平洋海兵隊司令官、スウィフト太平洋艦隊司令官、オシャネシー太平洋空軍司令官らとの意見交換を行なってきました。それぞれの方々から、熱心な説明を受けましたが、印象深かったのが、皆さんが説明にそうとうな時間を費やしたのが「いかに中国が長中期的に脅威か」ということだったことです。

 

 訪問した頃は、ちょうど米軍が北朝鮮に強い圧力をかけるべく対応している時期でした。各司令官たちも、「攻撃する」とはいいませんが、「最悪の場合に備えるのが軍人の務めであり、われわれの準備はできている。命令があれば、いつでも攻撃できる」と語り、かなりの軍事力を北朝鮮問題に集結しているようでした。しかし、それでもなお、私が感じた米軍関係者の共通認識は、「目前の危機は北朝鮮だが、それよりも重視して危機感を抱かねばならないのは中国である」というものだったのです。

 

 その危機感の背景には、中国による南シナ海の急速な軍事拠点化があります。皆さんご存じのように、中国はベトナムやフィリピンなどが実効支配していたパラセル諸島(西沙諸島)、スプラトリー諸島(南沙諸島)を軍事侵略し、次々と占領、支配していきました。そればかりでなく、近年では中国は埋め立て工事を積極的に行なって基地を建設し、長大な滑走路をいくつもつくりあげています。南シナ海は、もはや中国の海のようになってしまっており、これに対して、米軍は「航行の自由作戦」を展開して牽制しています。

 

 米軍関係者の認識は、「東シナ海も、南シナ海も、つながった海である」というものでした。南シナ海で起きているのと同じ状況が、必ず東シナ海にも訪れるとアメリカ軍は見ているのです。「われわれが直面しているのは、中国の覇権主義である」。その問題意識をアメリカ太平洋軍の各司令部も共有していました。これは私にとって驚きであると同時に、ある面では心強いことでもありました。

 

 6月12日に米朝首脳会談がシンガポールで開催されることが、紆余曲折の末、正式に決まりました。すると、どうなるか。もし決裂したら、トランプのことですから攻撃命令を発するかもしれません。しかし、最近の雰囲気でいえば宥和ムードが高まる可能性もかなりありそうです。現在、「休戦」状態となっている朝鮮戦争の「終結宣言」を行なうのではないかという観測も広がっています。

 

 そうなれば、在韓米軍が撤退する事態になる可能性もあります。親北の姿勢を隠そうともしない韓国の文在寅政権のもと、北朝鮮に宥和するかたちでの南北交流が進むかもしれません。現在は、北朝鮮が中国にとって日米と対峙するうえでの「緩衝地」になっていて、38度線が対立の最前線であるわけですが、今後は、自由社会と中国との対立の最前線が、「38度線」から「対馬海峡」に下りてくることも十分に想定されます。

 

 東シナ海での危機は、よりいっそう高まらざるをえないでしょう。対馬から五島列島、南西諸島、台湾にいたる線を突き破ろうとする中国の圧力はさらに増すはずです。日本は、この防衛ラインに敵の艦船や航空機を接近させないよう、ミサイルや潜水艦、レーダーなどをきちんと整備し、防衛力を高めておかねばなりません。

 

 日本は、663年に白村江で唐と新羅の連合軍に敗れたあと、水城などの城や防塁を築き、防人(さきもり)を置きました。13世紀の元寇でも、日本は、元と高麗の連合軍の侵略に備える体制をとりました。明治時代も、朝鮮半島の混乱につけこんでロシアが南下しようとしていることに危機感を持ち、朝鮮の独立・近代化を急がせようと考えました。しかし結局、清王朝がそれに立ちはだかったので日清戦争になり、次いで日露戦争に至ります。このように緊張した時代が再び訪れかねないことを、わが国は想定しておかねばなりません。

 

 同時に、賢い外交もますます必要になります。日米同盟の重要性はより高まってきますし、台湾や東南アジア、インド、ロシアなどともより緊密な関係を結ぶことが必要となるでしょう。

 

 そのなかで沖縄は、防衛外交の面でいちばんホットな地域になってきます。まさに、わが国の命運を握る地域です。日本の地理的な玄関口としての役割も、さらに増してきます。日本政府としても、沖縄を最重要地域として重視していかねばなりません。経済的にも、外交的にも、軍事的にもしっかりとした基盤を形づくり、平和な地域でありつづけるために努力を重ねていく必要があります。弱い横腹は、攻めかかってこられやすくなってしまうのですから。

 

 いま、東アジアの構図が大きく転換しています。アメリカもそれを見据えて戦略を構築しようとしています。日本も直近の動きばかりに目を囚われるのではなく、中長期的な動きをしっかりと展望しなければならない。そう強く感じています。

 

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